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珈琲案内人りん

Author:珈琲案内人りん
珈琲豆屋の”案内人”やってます。
珈琲の味に限らず、珈琲の世界すべてが面白いので、
自分の中で、コーヒーにつながったことなど をつぶやいています。

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東ティモール 救世主発見の国のコーヒー
なんとも初々しい味のコーヒーが入りました。
東ティモール”産のルシオズというコーヒーです。
(『ルシオ』というのは、そのコーヒー農園をまとめている代表者の名前…正確にはその代表者の弟の名前、です。)


東ティモール。日本と時差のない国です。
さてどこにあるのでしょう。

   東ティモール地図

最近、スターバックスなどでちらっと出ていたりしますが、
一般に、コーヒー豆販売店や喫茶店ではあまり目にすることのないコーヒーだと思います。
大量に栽培されるコーヒーではないのです。
フェアトレードコーヒーとして、産地援助を受けていることで知られています。


  東ティモールという国は、いわゆる貧困国です。
  そんな中、農業は大事な産業なのですが、その国際競争力はとても弱いのです。
  全所帯の4分の1がコーヒー栽培に関わっているほど コーヒーも重要な農産物なのですが、
  その商品を磨く知識・技術を持っていない という状況が続いていました。
  外貨の獲得のためには、コーヒーが代表選手だというのに。

  そこで、世界各国から復興・開発支援の手が入りました。
  栽培、収穫、精製。
  せっかく好ましい環境でいいコーヒーが植えられているのです、
  管理をしっかりする知識と技術を、日本のPWJ(ピースウィンズジャパン)などが指導しています。
  今、ぐんぐん品質が良くなってきています。


ところで、
フェアトレード=公正取引。
『適正な値段で途上国から輸入することによって、
立場の弱くなりがちな途上国との関係を公平にしよう』
というもの。
他の商品ではなく フェアトレード商品を購入することで、生産者の幸せに貢献できる、と。
認定機関があり、最近は認定マークの付いた商品を並べる大手スーパーなどもあります。


  大切なことなのだろうけれども、実際、どうしたもんかなあ…と思う。
  認定されていない中でもフェアトレード商品はたくさんあります。
  フェアトレードの認定を受けるにはお金がかかるので。
  小規模農家などは認定審査にかけるお金もないだろうし。
  組合の中にも強弱関係はあるようだし、
  生産者の中でもやはり格差はあって、
  本当に本当に困っている人たちの手にお金が渡るのか?というと、ちょっと疑問。


   「かわいそうだから」買って”あげる”、というのは何か違う。
   買ってもらえるようにするために頑張ろう!という気持ちになってもらうような循環を作る、という必要があるんじゃないかと思うので。
   商品である以上、…消費者からお金をいただく以上、
   生産者は、その価値のあるものにする責任があると思うのです。
   いいものをいいものとして世に出すために、努力はしなくちゃいけないんだと思うのです。
   
   「いいな」と思って買ったものが たまたまフェアトレード商品だった、
   という方が、生産者さんたちのモチベーションも上がるのではないのかな…。



そもそも私には、なぜ途上国に対してだけフェアトレードが叫ばれるのか分かりません。
別に途上国が相手でなくとも、公正な取引をすればいいんじゃないの?という思いが頭から離れないので、
フェアトレードについてはここでは無責任に深く話さないことにします。



               



ところで、
東ティモールといえば、コーヒーの救世主が発見されたところじゃないか!



こんなことが、あったのです。




コーヒーというのは、”コーヒーノキ”という植物の実から穫れるものです。

コーヒーノキは植物なので、品種があります。

大きく分けると、コーヒーは2つの品種に分かれます。『アラビカ種』と『カネフォラ(ロブスタ)種』。
近年レギュラーコーヒーとして飲まれるコーヒーは、主に『アラビカ種』という品種です。
ロブスタ種よりも、格段に風味が良いのです。
でも実は、その『アラビカ種』は、”さび病”という病気に弱い。
(逆に、『ロブスタ種』は さび病に強い。)

  コーヒーさび病菌 というカビが原因で、木全体の葉を枯らしてしまいます。
  空気感染するので、木から木へ、農園から農園へ、国から国へ、感染。
  1860年代は東南アジアで、1970年代は中南米で大流行し、甚大な被害をもたらした、恐ろしい病気です。


   コーヒーさび病


そのせいで、コーヒー界は、さび病に強い品種を求めてさまようようになります。
 ”ケント種”、が見つかり、病気に強い品種を開発しようとします。
・・・でも、ある さび病 には強いのだけれど、新型のさび病には勝てない。

エチオピア野生種由来の品種の中でも 多くの国が協力して
必死になってさび病に強いものを探しました。
”アガロ”、”カファ”、・・・
そしてあの有名になった”ゲイシャ”もこの時に採取されました。
・・・でも、やはり 全てのさび病 に勝てるものではなかったのです。



        そんな中で、ティモール!ティモールに注目が!


1927年に、あるコーヒーノキがさび病に有効なことが判明しました!
それは、ポルトガル領東ティモールの個人農園で見つかっていたものだったのです。
ティモール、でかした!

先に述べた『アラビカ種』と『ロブスタ種』。
アラビカ種 は さび病に弱く、ロブスタ種 は さび病に強いのでしたね。
通常、アラビカ種とロブスタ種は交配できないのですが、この見つかったコーヒーノキは、
『アラビカ種』 と 『たまたま変異した(4倍体になった)ロブスタ種』 の間に生じた交雑種(ハイブリッド)であることが判明したのです。
このコーヒーノキは、すべてのさび病に対して優れた耐病性を発揮しました。

コーヒー品種


そしてこの品種は、ハイブリッド ティモール(Timor Hybrid、ポルトガル語でHybrido de timor)と呼ばれるようになりました。
 (ただし、香味はアラビカ種よりずっと少なく、ロブスタ種よりちょっといいかな、程度なので
 ハイブリッドティモールという品種そのままではそれほど流通していません。)
大事なのは、不可能と思われていた”アラビカ種との交配”ができるロブスタ種が存在することがわかったこと。
コーヒー界での大発見、救世主、なのです。


・・・という歴史がある国なのでした。



               



今回 月替りコーヒーとして紹介する『東ティモール ルシオズ』は、
ねらっていない風味なので、好感が持てます。
どうだ美味いだろォ!という押しつけが全く感じられないので、楽。
冷めると ちょっと変わったお茶みたいな風味もあり。

世界にはいろんなコーヒーがあるんだな、ということを
ぜひ楽しんでいただきたいと思います。



                                  



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テーマ:コーヒー - ジャンル:グルメ

オセアニア | 19:00:00 | トラックバック(0) | コメント(4)
コメント
フェアトレード
東ティモールと云う名を聞くとなぜか、フェアトレードで取引される珈琲豆を思い出します。
まあ、こんなギョウカイにアマチュアながら関わっているからでしょうか。
確かに此の国の珈琲は美味しいと思います。
出来たらもう少し安くなると良いのですが。
2017-08-05 土 13:57:45 | URL | MK [編集]
MKさん
MKさん、そうですね、
どうしても東ティモールのコーヒーにはフェアトレードのイメージがついてまわります。生産者さんの賃金にまで反映させるために、割高になってしまうようですね。
コーヒーの栽培に携わっている人たちって、…
どうして美味しく飲ませてもらっている私たちよりも貧しい暮らしをしなきゃいけないんだろう。
世の中、不条理だ・・・。
2017-08-05 土 19:51:25 | URL | 珈琲案内人りん [編集]
コーヒー、さび病抵抗性育種と東チモール
>大事なのは、不可能と思われていた”アラビカ種との交配”ができるロブスタ種が存在することがわかったこと。
 コーヒー界での大発見、救世主、なのです。

〇なるほど、東チモールにそんなコーヒーの木(ハイブリッド)がありましたか。すごい発見ですね。
 私は稲の品種改良の専門家でしたので、たいへん興味深い記事でした。
 草々
2017-08-07 月 10:24:54 | URL | ささげくん [編集]
ささげさん
ささげさん、本当に、植物ってすごいですよね。
まだまだ発見されていない種もあるでしょうし、
発見されていても、それが持っている性質すべてが解明されているわけではないのでしょうね。
稲(お米)も野菜も果物も、どんどんどんどん新しいものが出てきてる、
植物の可能性って…果てしない。
2017-08-07 月 19:32:16 | URL | 珈琲案内人りん [編集]
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