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珈琲案内人りん

Author:珈琲案内人りん
珈琲豆屋の”案内人”やってます。
珈琲の味に限らず、珈琲の世界すべてが面白いので、
自分の中で、コーヒーにつながったことなど をつぶやいています。

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エルサルバドルって、・・・
昔、コーヒーと言えば 『キリマン』 『ブラジル』 『モカ』 『ブルマン』くらいのものでした。
中米のコーヒーの名前が日本で知られるようになったのも、ここ十数年くらいでしょうか。
「エルサルバドルの・・・」と言っても「聞いたことあるな」と思う人も増えたことでしょう。
エルサルバドルのコーヒー。
とても素直で、余分なものがついていない シンプルなコーヒーです。
きれいな、国、なのかな。
コーヒーにとって、どんな国なのかな。


    エルサルバドル地図



あまり知られていませんが、実はこの国にとって コーヒーは大きな大きな存在のものです。
19世紀の歴代大統領は、ほぼ全員がコーヒー農園主だったらしいですよ.。
1950~1970年頃は、グァテマラ・ホンジュラス、そしてこの国 エルサルバドルが、
中米のリーダー3か国として有名だったのだそうです。
かなりのコーヒー大国だったんですね。

それなのに、
1980年からの内戦で、コーヒーにとって重要な過程である『コーヒーを精製する精製場』がめちゃくちゃに破壊
しかも、1981年には、コーヒーの輸出が国有化されてしまって、
伝統のブランドが喪失してしまったのです。

その上、この最近では 2012年にコーヒーの木の病気、”サビ病”で大被害を受け、
コーヒーの木の多くがダメになってしまいました。

・・・そんなこんなの悪いこと重ねで、
かつての有名国は名をひそめてしまったわけです。

お金と余裕のない小規模農園は、サビ病耐性がある品種に植え替えをすることがなかなかできません。
エルサルバドルのコーヒー生産者は、約77%が3,5ha以下の小規模農園です。
(栽培面積が70ha以上の大規模農園は、約2%弱にすぎません。)
小規模農園ではコーヒーを精製する機械を持っていないので、いろいろな所が持ち込む『コーヒーの精製場』へ持ち込むしか
方法がありません。
持ち込んだ時点でもう、その農園は農園単位で売ることができず
共同組合などに売り渡してしまうことになります。
そうすると完全にトレーサビリティが失われてしまいます
どんなに一生懸命、どんなに最大のお金をかけて栽培に励んでも、
コーヒー精製場は内戦以前のコーヒー全盛期に作られた大規模な精製場なので、
ちょぼちょぼ精製するのでは稼働率が低く、
稼働率を高めるために 質よりも量を求めるのです。
そうすると、どんなにいいものを作っても 無価値になってしまうのです。
「いいものを作ろう!」という気にもなれません。
最悪の悪循環。


                 
             

ところで、

ひと言でエルサルバドルと言っても、やはりコーヒー栽培は地域によって差があります。
主に、3地域。

エルサルバドルのコーヒー栽培地域


    Apaneca-Ilamatepec…西部。大きい。
    Alotepec-Metapan…東北部。ポチリポチリポチリと。
    Cacahuatique…東部。ポツっと。

この中で、一番生産量が多いのはApaneca-Ilamatepecです。
国内コーヒー生産量の約半分を、この地域で栽培しています。
大規模農園が多いようです。

よく知られているのは、サンタアナ、アウアチャパンなどでしょうか。
有名な”サンタテレッサ農園”も、この地域にあります。

Alotepec-Metapanは、コーヒー生産地としては比較的新しい地域です。
しかし、・・・小規模農園がほとんどなのです。
小規模農園の苦しみ。大変さ。は、上記に述べた通り。
そして、もうひとつ。
生産者が、商売能力を持っていないこと!
大規模の生産者は大学教育まで受けていて英語能力があり、しかも渡航する資金を持っています
ですから、消費国と接触し、マーケティングや宣伝ができるのです。
しかし小規模農園の生産者たちの中でそんな人は10人にも満たない。

みんなお金も学力もないのです、
宣伝ができないのです、
見つけてくれるのを、…口コミで広がるのをじっと待つことしかできないのです。

小規模農園に残された道は、何とかして
国際的なコーヒー品評会 COE(Cup of Excellent) に参加し、入賞すること
なのです。

でも、Alotepec-Metapan、頑張っています。
近年注目のエルサルバドルの豆は、この地域にある”チャラテナンゴ”。
2017年のエルサルバドルでのCOE入賞は、ほぼこの地域から生まれています!

Cacahuatiqueは、気の毒に 経済発展が最も遅れている地域です。
内戦の被害が大きかった地域で、国の支援も届きにくいのだそう。
この地域からのコーヒーの輸出は、ほとんどありません。


   ・・・こんなにも差があるのですね。
   こんなコーヒー事情を知って、すごく複雑な気持ちです。


本当は、消費国の珈琲店それぞれが きちんとコーヒー生産地へ行き、自分の目でコーヒーを選んで購入すればいいのです。
有名どころだけでなく、
色々な事情を勉強してから、 
色々な生産者を訪ね、
「いい」と思ったものを適正価格で購入すれば、こんな差は出ないのです。
そうすれば、生産者だって、消費国の反応をみて 自信をつけたり改良を考えたり、成長していけるのです。

何でもそうです。
ミシュランで三つ星だ、とか、モンドセレクション金賞!とか、言われていたって、
そんなもの関係なく美味しいものなど、世の中にたくさんかくれているはず。
探し出せないだけ。
情報に流されているだけ。
人の嗜好はそれぞれなのです。
価値観は、一人ひとり違うのです。
いいと思ったものが、いいのです。
そうじゃないですか?

コーヒーの買い付けも、品評会に頼っているようではいけないように思うのです。
購入する側がきちんと品定めをする、
そうすれば消費者も生産者もおのずと正しい関係になっていくはず。
・・・コーヒーを消費する国の代表として、
私たち焙煎販売業者はもっと自覚しなければいけないなあ、と思ったのです。

                 

それから、

エルサルバドルのコーヒーの役割は、味だけではありません。
エルサルバドルのコーヒー栽培は、日陰栽培です。
この国の森林のうち、85%はコーヒーの森になっていて、
このおかげで 北米⇔南米間の渡り鳥の中継地。
それに、雨による土壌の浸食を防いでくれる。

つまり、エルサルバドルのコーヒー栽培は 生態系の持続可能性に貢献しているわけです。




こんな風に、コーヒー豆一粒一粒、コーヒー一杯には、いろいろな背景があります。
こんなこと、コーヒー豆屋になるまで 考えもしませんでした。
今、こうして知って考えてみて、前よりも一段と、
コーヒーをたまらなく愛おしく思います。



                                 





テーマ:コーヒー - ジャンル:グルメ

珈琲の周りの「?」や出来事 | 19:50:00 | トラックバック(0) | コメント(0)